脳梗塞からの復帰

40日目 転院

山の上にあるリハビリ病院へ転院になった。 言語療法士と面談。親族に左利きがいると、言語の回復も早いという。

リハビリは順調に進んでいる。朝は言語療法士が言語のリハビリを、昼からは理学療法士が身体のリハビリを、夕方に作業療法士が日常生活に必要な動作のリハビリをするというスケジュールだった。一日合計2時間、それを1週間休みなく3ヶ月の間、リハビリに専念する。

リハビリ病院に移ってからは、見舞いに行く回数が2日に1回に減った。右足に補助機をつけて、少しずつではあるが歩けるようになってきている。


昼食後に、父が外に散歩に行きたいというので、車椅子を押して病院の外に連れ出した。坂道を車椅子で押すのはちょっとした腕力を要した。坂道の途中でアジサイが咲いていたので、車椅子を止めて、アジサイ、と口にすると、父はいつになく優しい手つきでアジサイの丸々とした花に触れて、ゆっくりと撫で、ささやかに微笑んだ。

あまり風流な質の人ではないと思っていたので少し驚いたが、それでも父の唇には柔らかい微笑みが浮かんでいた。その口元は7年前に死んだ祖母のものにそっくりだった。(了)

2005年6月30日記す