脳梗塞からの復帰

入院5日目 姪のお見舞いに喜ぶ

朝、父が書斎代わりにしていた部屋の机の引き出しを整理していたら、国民年金や厚生年金の住所変更の届け出のプリントアウトされた書類が、6枚束になって出てきた。

「明日やのにぃ」と引き出しを手で叩いて言ってたのはこれの事かな。明日警察署に免許証の住所変更の届け出をするとも言ってたから、母はその事かもしれないと言っていた。

姪が来てると、父は凄く喜ぶ。僕たちには手を差し出さないのに、姪だと「握手しよう」という感じで差し出す。やっぱり賑やかな方がいいのだろう。

姪は握手を嫌がる。姪が握手してくれると、父の容態も良くなると思ったのだが、姪は嫌々と首を振ってなかなか握手したがらない。叔母たちも、はよおじちゃんと握手したって、と口々に言う。

昔、僕が父方の祖母の見舞いに行ったとき、様態が悪かったのに回復したから、その時の先例が頭にあるのだろう。


7時50分頃になって、面会時間の終わりを告げるアナウンスが鳴る。
昨日と同じように、父が「そー、そー」と言った。
「そー、そー?」と繰り返すと、首を横に振り、「そー、そー」とまた言う。
「そろそろ!?」

父は安心したように首を縦に二度振った。そろそろ帰り、と言いたかったのだ。 帰り、も口にして欲しかったけれど、言わなかった。一日目か二日目に来たときには、もう家かえっとき、と良く聞こえる声で言ったのに。

梗塞が広がっているせいかもしれないと少し不安になる。でも家族を思いやる気持ちは残っているみたいだから、大丈夫だろう。